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TOP対談 株式会社アイロム 代表取締役社長 森山 佳和 氏

弊社社長が飲食店経営者に直接インタビュー。そこから繁盛店の取り組みや経営のヒントを切り取ってお伝えします。
第10回は株式会社アイロム 代表取締役社長  森山 佳和氏にお話を伺いました。

--始めに、飲食業界に入ったきっかけを教えていただけますでしょうか。
 
(森山氏)高校を卒業してから飲食のアルバイトをずっとやってきていたので、向いている方だと感じていました。その後デザインの専門学校に通い、いずれその道で仕事がしたいと都内でアルバイトをしながら就職先を探すことにしたんです。その時のアルバイト先が、私が引き継いだBEE8の前身の会社です。
オープニングスタッフで入ったのですが、お店のポスターやコースターを作らせてもらっていました。そういう技術が重宝されて、社員にならないかと声をかけられました。就職先も見つかっていない状況だったのと、やりたかったポップや広告のデザインもできるということで、1年だけと思って社員になりました。それから1年半ほどした頃店長に抜擢され、系列の居酒屋など、当時渋谷エリアにある店舗全部を見るようになり、お店を周っていました。
 
--店長業はうまくいきましたか。
 
(森山氏)店長デビューした店舗では挫折しましたね。私以外社員はみんな年上で、誰も言うことを聞いてくれなくて。半年後、お店のリニューアルのタイミングが自分も変わるきっかけになりました。20代で居酒屋の店長職へいきなりの抜擢、会社的にも肝入りの人事だったそうなのですが、そもそも数字も何もわからない状態で。それまで私はレストランしか経験したことが無かったので、居酒屋のことはわからないだろうとスタッフに馬鹿にされることもありました。
それで、まずは居酒屋経営の勉強をはじめたのですが、他の店を知ろうとぐるなびで調べているうちに、サイトの傾向が見えてきたんです。どういう見せ方をすれば売れる店になるのか。もともとデザインをやってきた事がここで活きて、手入れをしました。そしたら売り上げが倍になって。お店も忙しくなり、スタッフ間の雰囲気も変わっていきました。とにかくやらなければならなかったのと、悔しい想いをした分見返したいという気持ちが自分を動かしましたね。実績ができたことで、売り上げ不振店で人が足らないと私が入るというサイクルができ、ことごとく改善していきました。ただ、この時は飲食業を一生の仕事にするとは思っていなかったのですが。

--人のマネージメントはどうやって覚えていったのでしょうか。
 
(森山氏)外部の研修に参加したり様々な本を読んだりして、新しく仕入れた情報は必ず実行しましたね。知識から入って実践し、上手くいったことは続けて。若さゆえの柔軟さがあったので、前の日の自分を否定できたんです。その後27歳でBEE8の店長として戻ってきましたが、32歳の時に会社が倒産しました。それまで捧げてきた10年がこんな簡単に終わってしまうのかと、涙が止まらなかったですね。
 
--10年飲食に身を置いてみて、独立という考えはなかった?
 
(森山氏)なかったですね。会社が倒産し、今後どうするのか色々な選択肢があったと思うのですが、私は買い取るという方法をとりました。BEE8を運営しながら更に資金が必要だったため、お店を作って分母をあげていきたい、それで誕生したのがサカナバルです。

--1号店を恵比寿に出店されるわけですが、今と違って当時はお店が無いエリアでしたよね。
 
(森山氏)そうですね、私たちの出店が確実に街を変えるきっかけになったと思います。線路を挟んでいるため、商圏が180度しかなく、飲食業の先輩たちからも厳しい場所だと言われていました。これまでは駅からすぐのところにお店を出すのが主流だったのですが、私の世代あたりから、ちょっと不便な場所で出店してコンテンツを売っていく、というスタイルが同時多発的に増えました。
 
--業態については、なぜ魚をメインに扱うことにしたのですか。
 
(森山氏) BEE8がローストビーフを売りにしていて、美味しい肉の仕入れルートも持っていたこともあり、最初は肉バルをやろうと思っていました。ですが、出店する場所をみたら肉バルが受けそうもない気がしたんです。きらびやかな内装の店もなんか違う。それで、以前からあたためてきたアイデア「魚」に方向転換しました。
「サカナバル」というのは実はこの業態を説明するときに、肩書き的に使っていたものなんです。店名をどうしようかとなったときにこのまま使いたいなと思って、調べてみたらどこにも無かったのでそのまま使用することにしました。
 
--開店してみてすぐにお客様の反応がありましたか。
 
(森山氏)10月にオープンしたのですが、翌2月ぐらいまで不振でしたね。認知の問題です。ただ「サカナバル」ってキャッチーだったので、そのうち飲食系の雑誌から取材が入るようになり業界人から広まっていきました。そのときの勝因は何かと振り返ってみると、多少間違えても売り上げがたつという確固たる自信があったことですね。業態も悪くない、やっていることも時代とずれていない。その強い意志がスタッフをも巻き込んで、この店は絶対売れるという気持ちにさせていました。

--確かに「サカナバル」はシンプルでありながらフックになりますね。2店舗目の六本木の反応はいかがでしたか。
 
(森山氏)早かったですね、2ヵ月後くらいには利益が出始めました。六本木に関しては初めてメディア戦略をしたんです。プレスリリースをうったらすぐにネットのニュースに取り上げられるなど反響がありました。その後、川崎、横浜元町、五反田と出店しましたが、元町は今、缶詰工場になっています。
 
 
--コロナ禍といわれ1年が過ぎました。当時と今では少しお客様の状況も変わっているようにも感じます。
 
(森山氏)最近では20時まででも売り上げが大分あるので、やっぱり外食したい人が多いということなのだと思います。ランチを全店でスタートさせたのは、確実にコロナで変わった点です。また、自分たちは外食しかできないと再認識させられました。
なので、そこに立ち返ってみようという気持ちになりましたね。例えば、生ビールを飲んだときの感動は、缶にはないものです。当たり前のように飲んでいたときには忘れていたけれど、久しぶりに外食して飲む生ビールには、美味しさの原体験ともいえる衝撃がある。ビールは一例ですが、僕たちが一番大事にしなければいけないのは、飲食の核となる部分、外食でしか味わえない体験を提供することなんだと腑に落ちました。
 
 
--原点回帰ということですね。
 
(森山氏)はい。店舗を出すにつれ「これがヒットするだろう」とビジネスライクに考え始めていたんです。それがコロナを機に思い直して、他店の見方も変わりましたね。以前はどうやったら売れるかに注視していたんですが、これはお客様を無視した視点だなと。もっとお店の核になる部分、現場スタッフがどう働いているかをより見るようになりました。
 
--昼はラーメン、夜はバルと二毛作をスタートしましたが、こちらもコロナの影響といえますか。
 
(森山氏)いえ、恵比寿をオープンするときからラーメンがやりたいと言っていました。昼夜違う業態をやれば、グルメサイトも2ページ作れて認知の窓口が広がる。売り上げ1000万を目指すにはこれだと思っていましたが、踏み切れずにいた。それがコロナで休業となり、総料理長の手が空いたタイミングで急ピッチにすすめました。ビーガンに関しても2019年から構想はありましたし、缶詰も同様です。コロナだから始めたのではなく、温めていたものに着手する時間ができたからスタートしたんです。なので、構想期間が長かった分、完成度の高いものが提供でき
ていると思います。
 
--今後の構想や目標はありますか。
 
(森山氏)店舗数を増やすより既存事業の売り上げを伸ばしていきたいですね。それとフェスなどイベントにも積極的に参加し、違った形の収益体制を作りたいです。この1、2年は今あるものの精度を上げつつ、アイデアを貯める時期にしたい。月並みかもしれませんが「お客様のために」というのがあります。それをどれだけ噛み砕いて、自分たちの腑に落ちているかが重要だと思います。なので、当たり前のことを当たり前にやりながらボトムアップしていきます。
 
--ラーメンをいただいたときにそれはすごく感じました。どれだけ手間がかかっているんだろうと。
 
(森山氏)めちゃくちゃ試作を繰り返しましたからね。いまだに完成形ではなくブラッシュアップを続けています。この経験が僕らのグランドメニュー作りの原型になり、同じような方法でサカナバルを象徴する一皿を作っていこうと挑戦しています。それと、持続可能という点でサスティナブルシーフード(環境や社会に配慮して生産された持続可能な水産物)をグランドメニューに、旬のものはおすすめで提案していこうと思っています。飲食を長く続けたいから、環境問題にもリンクしていかないとですよね。


外食だからこそ提供できる価値や体験に原点回帰しつつ、新しい取り組みにも積極的に挑戦されている森山社長。そのバランス感覚の良さから発揮される今後の展開が楽しみです。ありがとうございました!株式会社アイロムHPhttp://i-rom.co.jp/


■サカナバル 恵比寿店
所在地:東京都渋谷区恵比寿南1-18-12 竜王ビルⅡ1F
電話番号 03-6451-0166
営業時間<通常時>
[SAMAR ラーメン]11:30-14:30
[ サカナバル]16:00-23:30
定休日:なし
※新型コロナウイルスの影響により、営業時間・定休日が記載と異なる場合あり

 
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