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TOP対談 長岡商事株式会社 取締役社長 前川 弘美 氏

弊社社長が飲食店経営者に直接インタビュー。そこから繁盛店の取り組みや経営のヒントを切り取ってお伝えします。
第11回は長岡商事株式会社 取締役社長 前川 弘美氏にお話を伺いました。


--前川社長は三代目ということですが、お父様の会社が飲食業に入るきっかけですか。
 
(前川氏)そうです。逆に、そうでもなければ飲食業界には入らなかったでしょうね。創業から順風満帆でしたが、バブルがはじけた後に勝負したお店がうまくいかず、大借金を抱え一家の危機となりました。子育て中ではありましたが、私が救わなくてはと思ったんです。莫大な借金を背負い、家族の体調も崩れてしまった。それを何とかするのが私の仕事だと思ったことがきっかけです。
 
--全くの飲食未経験での入社、何から手を付けていったのでしょう。
 
(前川氏)まずは事務所で経理関係の仕事から始めましたが、蓋を開けてみたら結構ぐちゃぐちゃな状態で。改めてどうにかしなくてはという気持ちと、絶対に自分で幸せな会社を作ってやるという強い決意が生まれました。それを実現することが、結果、反対している人たちへのリベンジに繋がりますから。ただ、父とは意見の衝突はありましたが、最後は認めてくれて、亡くなる前に私に託してくれました。
 
--それが今の前川社長の原動力にも繋がっているのですね。会社の経営は、パンドラの箱を開けたような状況。数々の難局はどう乗り越えたのでしょうか。
 
(前川氏)大変なのは私が社長に就くまで続きました。経理面の改善と売り上げアップは並行して取り組んでいましたが、もう一つの問題が人でした。教育する大変さを身に染みて感じましたね。
 
 
--売り上げアップという営業面に関しては、どのように切り込んでいったのですか。
 
(前川氏)私はデザイナーをやっていたので、まずメニューのデザインを変え、売りたい商品がきちんと分かるようにすることからスタートしました。また、自分自身も接客しながら、お客様がリピートしてくれるよう信頼関係を築くようにしました。当時様々な業態で7店舗ドミナント展開していたので、メスを入れるお店を絞って着手していったのですが、なかなかうまくいかず・・・。
一番売り上げがあった店舗から手入れを始めても、古参幹部たちの協力を得られないなんてこともありました。当時私は一介の社員で、なかなか聞いてもらえなかった。それでもいつも真剣に取り組んでいましたし、今よりもアグレッシブでしたね。結果、長岡商事としては、スペイン、ビアバル、和食の3業態5店舗を運営するに至っています。
 
 
--さて、ながおか屋さんといえば「ラムチョップ」ですが、この業態が誕生したきっかけを教えてください。
 
(前川氏)私がフジロック(日本のロック・フェスティバル)に初めて行ったとき、ここでラムチョップにかぶりつきたい!と思ったことです。当時、ラムを食べる機会といえば、フレンチやイタリアンに行ったときくらいだった。その時は「自分がお店を開くならラムチョップを主体にするのになー」くらいに留まっていましたが、実際飲食業に携わることになって思い出したのが誕生のきっかけです。

--今でこそラムチョップはポピュラーな食材になりましたが、当時は斬新なお店としてお客様の目に映ったでしょうね。知られていない分リスクも高かったのではないですか。
 
(前川氏)はい。まず立地的に考えると近隣に大型の和食店が2店もあったため、和業態はカニバリになる。ならば新業態でと思ったとき、ちょうど世間がワインを飲み始めた時期でした。もちろん上野にはそんなお店はなかった。ならばワインを主体とし、ここでしか食べられないメニューがある洋業態にしようと決めました。そこで「ラムチョップしかない!」となったんです。ワインを出すといっても気軽さが必要だったのと、焼き鳥のように手づかみで食べられて、日本人になじみのある醤油ベースのタレで出せるといった点を、ラムチョップはクリアしていたんです。
 
--お客様の反応はいかがでしたか。
 
(前川氏)なにしろ受けなかったですね。まずラムチョップが何なのかお客様は知らない。そして、仕入れ値が高い。なぜ高級レストランで出されていたのかこの時わかりました。しかしやると決めていましたから、おいしかったらお代りできる値段設定と立地とを掛け合わせると、原価の心配よりスタイルに見合った額にしなくてはいけませんでした。自分としてはリーズナブルに提供できていると思いましたが、それでもお客様にとっては高い。なぜなのか聞いてみたら、比較対象が焼き鳥だったんですね。現実は甘くないと思い知りました。
厳しい状況は続きましたが、初志貫徹、自分がやろうとしている業態をしっかりPRしていこうと決めました。そこでまず、オープン当初あいまいだった客層のターゲットと商圏を明確にし、その人たちにアピールすることを考えました。1周年記念を迎えるにあたり「下町バル通信」という冊子を作成し、近隣にポスティングを試みました。内容はお店やスタッフの自己紹介、人気メニューランキングなど新聞のようなスタイルです。お店のコンセプトがお客様に伝わったのか、そこから人気が高まりました。地元での認知が高まったら、自然とそれ以外のエリアからのご来店も増え、繁盛につながりました。
 
--これまで紆余曲折あったなかで、コロナ禍の今はどうですか。
 
(前川氏)きついですけれど、今は前しか向いていないです。次にどうしていこうか、チャレンジしたい事で一杯です。これまで通販、テイクアウト、デリバリーとやってきましたが、特に力を入れたのが社員研修と業態開発ですね。
 
--まず業態開発ですが、具体的にどんなことを行ったのですか。
 
(前川氏)ずっとラムチョップを売りにしてきましたが、羊の様々な部位を使った料理を開発をしました。和食に関しても、どうしたらオリジナリティあふれたものになるか研究しています。また、ある料理に特化した店舗づくりも、物件を含め視野に入れています。今は引き出しを着々と増やしている感じです。
それと、既存メニューを見直しましたね。「樽出しワイン飲み放題」は人気があり、お店がヒットした要因にもなっていましたが、一旦休止することを決めました。確かに飲み放題はお客様に喜ばれますが、ワイン初心者への入口にすぎません。もっとワインの奥深さを知って欲しいので、ボトル提供に注力する方向へ舵を切ろうと思っています。もちろん、看板商品を下げる決断に勇気はいりましたが、コロナ禍で求められるものが変化してきた今、そのニーズに応えるためにも、これからは価値の訴求へ挑戦していきます。
--御社の社員教育はとても印象的ですが、スタートした背景や手順をお聞かせください。
 
(前川氏)お店を開けるとなっても全店とはいかなかったので、自ずと休みになってしまうスタッフがいました。こういった状況下で、人は何もせずにいると気持ちがふさぎ込みがちです。私はそれを懸念して、社員のモチベーションを上げ続けることを自分の目標としました。その方法としてベストだと思ったのが社員研修だったんです。
これまであまりできなかった会社のミッションやスピリットを浸透させるいい機会でしたし、営業できない時間を勉強に充てて、成長するチャンスだと捉えようとしました。また、勉強会とは言わず、「ヒツジの学校」と呼ぶことで参加の敷居を低くしました。最初はすべて私がプログラムを組んでいましたが、スタッフがやり方をつかめてきた段階で、社員を適材適所に振っていきました。ただ、トップダウンだけにならないように気を付けて、積極的に下の子たちに講師を担当してもらって。驚いたのが出席率で、若い子ほど高いのは意外でしたし、企画してよかったと嬉しくなりましたね。自分が入社した時に足りなかった「人との繋がり」が築けていたのだなと実感しました。
今年入社した社員たちは、店舗が閉まっていることで現場での体験が乏しく、少し心配していましたが、ヒツジの学校を開催したことでめきめき伸びてきました。それはインプットとアウトプットが同時に行われているからだと思います。講義は聞くだけではだめで、かといってレポート提出は足かせになる。そこでまず授業の最後に必ず感想を言ってもらうようにし、さらに参加者のSNSグループ内でも同様に発表してもらうようにしました。そうすると自分の感じたことを2回アウトプットすることになるので理解が深まるようです。
 
--参加者が多いというのはそういう仕掛けがあるからなのでしょうね。ところで、前川社長といえば地域ぐるみのイベント「食べないと飲まナイト」の発起人でもあります。
 
(前川氏)はい。ながおか屋が繁盛し始め混んでいても、周りを見てみたら変わっていない。一店舗が繁盛しただけでは、人が来る街にはならないんだと気づきました。「街全体を繁盛させて盛り上げる方法はないかな」と考えたときに、うちの常連さんに、ほかのお店にも行っていただけるような流れを作ればいいのではないか、というアイデアが浮かびました。それと立地上、ブラブラしにくい街なので、この時だけはそんなことを気にせず歩き回ってほしかったというのもありますね。
 
--最後に、御社で働くことでスタッフさんたちにはどんなことを感じ取ってもらいですか。
 
(前川氏)「人生は楽しい、豊かに過ごしてほしい」、それを一緒に仕事をすることで感じ欲しいし、実現したい。そのためのお手伝いを私はしていると思っています。人生は休んでいる時間より働いているほうが長いですよね。ならば働いてる時間が幸せであれば、人生は豊かになると思うんです。「笑顔と喜び=ハッピーを提供し続けること」が弊社のスピリットなのですが、社員、お客様、お取引先様などみんな一緒に幸せになりたい。そのためには何より自分が幸せを感じていないと周りもハッピーにはできませんから。
社長とスタッフさんたちの信頼関係の強さ、距離の近さを感じるインタビューになりました。前川社長ありがとうございました!
長岡商事株式会社 http://www.nagaokasyouji.co.jp/


 
■下町バル ながおか屋
所在地:東京都台東区上野2-9-5 1階 & 4階
電話番号 03-5818-6688
営業時間<通常時>
【月〜金】17:00〜 23:00 【土日祝】12:00〜 23:00
4階のみ金土祝前日営業、22:00閉店
定休日:なし
※新型コロナウイルスの影響により、営業時間・定休日が記載と異なる場合あり
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