TOP対談

TOP対談 株式会社グリップセカンド 代表取締役社長 金子 信也 氏

弊社社長が飲食店経営者に直接インタビュー。そこから繁盛店の取り組みや経営のヒントを切り取ってお伝えします。
第13回は株式会社グリップセカンド 代表取締役社長 金子 信也 氏にお話を伺いました。

--バスケットボール選手から飲食業、そこに至るまでの経緯を教えてください。
 
(金子氏)実業団でバスケットをやっていて、30歳で引退しました。その後、NYやLAを拠点に世界を1年ちょっと放浪していました。NYのブルックリンではレストランが街を造っているケースが見受けられて。華やかな世界だけでなく、地元に根付いたネイバーフッドのレストラン。ちょうど世界中でそういった事例が増えていた時期で、地元の食材を使った地産地消の流れが高まりつつありました。一方日本はというと、大手チェーンが店舗展開の真っ只中で、個性のあるレストランといえばイタ飯くらいだったでしょうか。きらびやかなレストランが無かったんですよね。そういう状況に直面した時に、自分にできることは何か。僕は今までバスケットという競技を通じてチームを作ってきたプロです。それを仕事に活かせればいいなとセカンドキャリアを考え始めたころ、海外のレストランの事例に大いに刺激を受けました。日本のお客様至上主義のサービスではない、お客様と同等の目線を持ったサービス。そんな時、池袋の居酒屋が潰れそうでスタッフが困っていると聞いて、店ごと買ったんです。それが飲食業に携わるきっかけですね。

--学生時代からバスケ引退までの間、飲食業でアルバイト経験もない中で、いきなり店を買ってしまうという決断は度胸がありますね。
 
(金子氏)勉強のつもりでした。「きんぺい」という炭火焼のお店だったのですが、1年間はその業態を引き継いで運営しました。キャリアのない自分にとって池袋はなじみがない場所で、土地勘もないことがハードルを低くしました。スタートしてみて愕然としたのは、池袋の人たちが、自分の街に対してネガティブな見方だったり言動をしていたことです。ある意味何もない池袋という場所は、自分がこれまで見てきた世界を表現するのにちょうどよかったのかもしれません。32歳でお店を買い、33で神楽坂、34でグリップオープンと続きましたが、僕の考えの中では、出店より人の教育が先でした。メニューやサービスより人、チームの教育が最優先。ですので、展開の速さはそれだけの店舗を作れるチームに成長するスピードが速かった結果ですね。

--グリップの出店が、飲食をやりたいというきっかけになったレストランを表現することに繋がりました。
 
(金子氏)僕の目的はそこだったので、イメージを固め自分たちの力を蓄え、ようやく思っている形にできる時期が来たなという感じでした。今もそうなのですが、出店する最終的な判断で、僕が決めることは一つもないんです。それをできる人間がいるかどうか。もちろん、責任はとりますが、会社の規模を決めることは全くなくて。僕だけがやりたくても、それは尻つぼみになるだけですから。みんながやりたい、かつその当事者がいる、それが最終的な出店判断になります。なので、出店スピードを急ぐということはありません。自分たちがやりたいことが圧倒的にできるかどうかが基準です。
 
--明確なポリシーがあるんですね。
 
(金子氏)たくさん店舗を作ったところでスタッフのスキルが上がるわけではありません。最終的には人が残るようなプロセスを示せれば、チームとしては成功なのかな。これが組織として戦うのであれば、成長し財を貯め会社を存続させることが大事なのでしょうけど、僕たちはあくまでチームを作ることが目的なので。最終的に人が残れば、と思っています。
 
 
--成果を作ることが目的ではないと。
 
(金子氏)いいレストランを作るためのチーム育成が僕たちの仕事なので。結果はそれに付随してきますしね。なので、コロナ禍でも、もちろん売り上げは落ちましたが、何か困ったことがあったかといえば特になかったんです。スタッフたちは自主的にミーティングを重ねていました。いろんなセクションが毎日自ら進んでそういうことを行っているのは誇れることだと思います。昨年6月のロックダウン明けからのスタートダッシュが素晴らしくて、11月までの前年比が110%まで伸びたんです。自分たちが十分な時間をかけて答えを出したものにお客様がどう反応されるか、チームが理解していたのが強かったですね。
 
--業態で見ると、和食、洋食と違いますが、ブルックリンで見たレストランを再現したいというのはなかったのですか。
 
(金子氏)明確にありました。はじめが炭火焼のお店でしたが、自分たちに調理技術がなくても、旨
いものを焼けばできたんです。そこで、いい素材を入手すべく、全国にいるバスケットボール時代の
知り合いに片っ端から電話して、美味しい食材を送ってもらいました。それが今契約農家さんと僕た
ちが関係を 築いているベースになっています。産地から直接仕入れることは僕らにとってメリットが
大きいです。
 
--しかし、いい素材があってもそれを調理する人がいないと成り立ちませんよね。
 
(金子氏)もちろんそうですが、僕たちにとって、いい料理人よりいいチームでお客様に提供することが大切で。そうすることで料理の美味しさをすべてのスタッフがお客様に伝えることができると思うんです。食材と生産者とお客様を繋げるという、グリップのコアカルチャーがその時点で出来上がっていたということです。ある食材に対してしっかりディレクションできる人が一人いれば、価格やポーションなどは、お客様の要望をくみ取って決めていけばいいと思っていて。なので、基本メニューが12品以上ありません。今お客様がどんな風に食べたいのか、そのニーズに合わせて常に変化させています。これは一般的には大変なことなのでしょうけど、僕たちはずっとやっているので苦になりません。
--みんなで話し合って決めるという文化が、3店舗目のグリップを出す前から始まっていたということですか。
 
(金子氏)はい。そもそも「グリップらしさとは?」は常に議論していて、その中心がコアバリューです。当時の社員みんなと議論して、僕たちの価値観はこういうものだよねというのを文章化したものが10項目あります。それが今でも採用、昇格、解雇全ての基準になっています。似たような人が集まってくるのは、僕たちのコアバリューに共感できるかが採用の基準になっているので、当然なのかもしれませんね。新卒採用を始めて5年目ですが、明確な採用基準、教育スキームがあるので離職率が低いです。そのうえ、スタッフは業態全てを勉強することができます。例えばベトナム料理業態ですが、これは社内の薬膳チームがメインとなっています。コロナ禍で家庭では出せないようなものをレストランとして用意しようと、薬膳、ハーブ、スパイスに注力しメニューに取り入れました。
 
--会社を立ち上げて17年経ち、何合目まで来ていると感じますか。
 
(金子氏)4,5合目くらいじゃないでしょうか。目の前のことを一生懸命やって、常にブラッシュアップすることができていて、周りから見たら「あの会社好きなことしかやってないけどすごい会社だな」と思われるのが、一種の目標かもしれません。売り上げができてくると店舗展開を考えると思いますが、大きくなるほど血が薄まっていき、中には会社を立ち上げた本人が寂しい思いを抱えて辞めていくパターンも聞きます。そう考えると、自分のやっていることに誇りを持てて、圧倒的に当事者として携われている店があればいいんじゃないかな。売り上げや店舗数、他人の評価ではなく自分たちがかっこいいと誇れることが基準ですね。
 
--グリップセカンドといえば女性スタッフのいきいき働く姿が印象的ですが、経営者としてどのように働いてもらえたら嬉しいですか。
 
(金子氏)女性と男性では持っている感性も背景も違います。現在の、スタッフの半分以上が女性という状況は、以前から描いていたものでした。女性だから見える視点って、レストランにはすごく重要です。グリップは女性が会社をリードしていく、業界でも珍しいケースではないでしょうか。彼女たちの感性が最前列にいけるようなレストランができたら、すごく共感を得られると思っています。実際、海外で女性が活躍しているところを多く目にしました。バーテンダー、ラウンジのマネージャーや、ソムリエといった人たちが女性だと、やっぱりハートフルで、表現されている店舗の色あいや細部も変わってくる。グリップにしてみても、僕のイメージを男性デザイナーが作るんですけど、最終的には京子さん(レストランの統括・女将)の感性がお店に反映されます。最終判断をする女性陣がいる日本のレストランってないですし、自分でもユニークだなと感じています。
 
 
--公園との取り組みも話題になりました。実際運営してみて気づく公共事業との関わりや周りへの影響はいかがですか。
 
(金子氏)いわゆる官民連携ということですが、僕たちが他と違う所が1点あって、南池袋公園の場合、公園を作る段階から一緒に携わっています。なので事業者として入っているにも関わらず、公園内のトイレの管理やごみの処理など、全部うちが運営するんですよ。これまで区には苦情しか届かったそうですが、僕たち民間が入っているとクレームだけでなく感謝の言葉も届いてくる。そういう声があることを知らなかった区とすり合わせできるスキームができたのはよかったですね。ただ、根本は使う側の問題で、どこまでコミュニケーションを通して律していくかなんです。それを5年間あきらめずに続けてきた結果が、お互い気持ちよく公園を使おうという土壌が使う側にも浸透したことだと思います。
 
--今のお話から手応えもあり、地域の方にも良い印象が与えられたことが伝わってきました。最後に、未来の目標や夢をお聞かせください。
 
(金子氏)最終的には「人が残せるかどうか」に尽きます。それが多ければ多いほど、自分がやってきたことに意味があると思うんです。当面の目標といえば、「except for A(エクセプトフォーエー/A以外)」です。これまで農家さんと仕事をしてきて思うのが、野菜に比べて果物は使い道が狭いこと。果物は糖度が高い分傷みやすいうえ、等級が下がるのも早い。そこで昨年6月から全国の果物のB,C級品を集め加工を始めました。それをジェラートや、パン、コンフィチュール等に使うんです。農家さんは腐ってしまう前に品物をなんとか売りたい、その手助けとして僕たちができるのは、それらを加工し価値を付けてお客様に提供することだと考えました。
お互いにとってすごくいい取り組みだと思っています。実は、このプロジェクトは旬を伸ばすことにも繋がります。きちんと加工すれば1年くらい保存がききますからね。旬を売りたいレストランにとっても、こういった商品は新しいアプローチになるのではないでしょうか。それから、子ども食堂をはじめ、食事に困っている子供を助けるような社会的な取り組みにも関わっていけたらと考えています。そういった活動を絡めて、果物が廃棄されてしまうような事がない流通ができたらいいですよね。

 
 
年代、男女問わず人気のある店づくりの秘訣は、「チームとしてどれだけ成熟しているか」。その度合いが出店のタイミングという、新しい発想を聞かせていただきました。金子社長ありがとうございました!
株式会社グリップセカンドhttps://grip-magazine.jp/
■Racines (ラシーヌ) 
所在地:東京都豊島区南池袋2-14-2 B1
電話番号 03-5944-9622
営業時間<通常時>
Lunch11:00 -15:00
(平日)Cafe14:30 -17:00 Dinner18:00- 23:00
(土・日・祝)Cafe15:00 -17:00 Dinner18:00 -22:00
定休日:無休
※新型コロナウイルスの影響により、営業時間・定休日が記載と異なる場合あり
 
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